【完】素直じゃないね。
──兄貴の葬式が終わった後、髪を黒く染めた。
ピアスを外し、制服も兄貴の真似をして着崩すことなく身に纏った。
喪があけ、登校した初日。
腫れ物に触れるように俺を遠巻きに見ているクラスメイトの中で、宙は、俺の姿を見つけると一目散に駆け寄ってきた。
変わりきった俺を見て、宙がひどく驚いていたのを覚えてる。
『高嶺、どうしたの?
その髪……。制服も……。
高嶺らしくない……』
『……宙。俺、もう高嶺悠月はやめる。
朝陽として生きていくことにしたから』
『え? なんで……』
『こうすることでしか、朝陽を続けていくことでしか、美織に贖罪できない』
宙がうつむく。
ぎゅっと、握る拳に力が入っているのがわかった。
やがて、宙はうつむいたまま振り絞るように声を上げた。
『そっ、か……。
わかった。俺は、高嶺を応援するよ』