【完】素直じゃないね。
……この状況は、なに……?
あたしの背中は壁に当たっている。
そして、片手を壁についた高嶺によって、あたしは完全に逃げ場を失っていた。
「つかさ」
覆いかぶさるようにして至近距離で耳をくすぐってくる、高嶺の甘い声。
あたしは震える唇を開いた。
「な、なによ」
「今日、朝からずっと目逸らしてるよな。
さっきも、俺が見ると目逸らすし」
核心を突かれたようにドキッと心臓が揺れ、動揺する。
「そんなこと、ない」
できるだけ冷静を装って答える。
でも、そう言ったところで説得力がまるでないのは、あたしが一番分かってる。
だって、こうしてる今も、目の前の高嶺を直視することができずに顔を逸らしてるんだから。