【完】素直じゃないね。
ツーツーツーと、通話が切れたことを知らせる音を鳴らすスマホ。
それを持った手をがくんと降ろした俺は、ベランダの手すりを掴み、しゃがみ込んだ。
「……あー、不意打ち……」
なんでこいつは、こうなんだよ。
声が、耳から離れない。
「寝れねぇよ、くそ」
こいつにだけは、兄貴の真似事をした笑顔を向けたくない。
いつの間にか、強く、そう思うようになっていた──。
俺はスマホを握り直すと、電話をかけた。
間も無く、スマホの向こうから声が聞こえてくる。
『もしもし? 朝陽?』
聴き慣れた、美織の声だ。
「ごめんね、こんな時間に」
『ううん。どうしたの?』
「明日の待ち合わせ場所、変更してもいいかな」