【完】素直じゃないね。


空を見上げる。


涙でぼやけて、星が見えない。


だけど、今きっと同じ空を見上げてる。


もう、これで終わりにするから。

高嶺を想うの、やめるから。


そう決めて、電話をかけた。


「ふ、う……」


ああ、もう。

なんで、こんなに涙止まってくれないんだろ。


頭の中に浮かぶのは、高嶺との思い出ばかり。


──出会った頃は最悪だった。


でも、あたしのことを何度も助けてくれた。


心の中にすっと入ってきて、あたしがほしい言葉をくれた。


意地悪で、でもなんだかんだ優しくて。

あたしのこと、ちゃんとわかってくれて。


そしていつの間にか、こんなにも好きになってた……。


いっつもムカつくくらいかっこいいくせに、笑うと途端にあどけなくなって。

高嶺の笑顔、ほんとに、好きだったなあ……っ。


「うう……」


涙は、拭っても拭っても、拭いきれない。


高嶺が幸せになりますように。

それ以外、もうあたしに願うことなんてない。







< 273 / 409 >

この作品をシェア

pagetop