【完】素直じゃないね。
「俺、ずるいんだよ」
古い匂いの図書室。
この学校の図書室は、利用人数が極端に少ない。
その理由は、各教室に新刊の文庫本が配布されるようになっているからだ。
読書を推進するため、本を生徒の身近に置くようにしたとかしないとか。
でもそしたら、図書室いらなくなっちゃうじゃ、とあたしは思うんだけど。
そういうわけで、昼休み以外、図書室を利用する人はいない。
放課後になって掃除に来た今も、静まり返って人の気配がない。
換気しなきゃと、窓に向かって図書室を進んだ、その時。
「……お嬢さん、お嬢さん」
「えっ!?」
突然どこからか声が聞こえてきて、あたしは思わず飛び跳ねた。
一番奥のテーブルの影──そこに、彼はいた。