【完】素直じゃないね。
あたしは、眉を下げて笑った。
そして、あたしのせいで沈んだ空気を明るくするように、おどけたふうに言う。
「すいませんでした。
せっかく、相談にも乗ってもらったのに、こんな結果になっちゃって。
ほんと、なにやってんだーって感じ……」
と、その時だった。
あたしの声を阻むように腕を掴まれ、強い力で体を引き寄せられていたのは。
気づけば、あたしは充樹先輩の腕の中にいて。
抱きしめられてる……?
そう理解した途端、びくっと体が揺れる。
男性への恐怖心が、一気に心と体を襲う。
「ちょっ……」
「離れないで」
「え?」
「俺、ずるいんだよ。
弱ってるところにつけこんじゃうくらいには」
「充樹、先輩……?」
「──つっちゃん、好きだよ」
「え?」