【完】素直じゃないね。


「昨日のキスで意識してんの?」


「違うっ」


「じゃあ今、俺の目見ろよ」


「……っ」


逸らしたまま動けないでいると、高嶺があたしの頬を片手で挟んだ。


「俺こっち」


否応無しに、高嶺の方に顔を向けられる。


──目が、合ってしまった。


どアップで視界に広がる、端正すぎる顔。


ガラス玉のような透き通った瞳が、あたしの瞳を貫いていて。


瞬間、顔中が発火したかのように熱くなり、反対に手先は急速に熱を失った。


そんなあたしを見て、高嶺が容赦無く口を開いた。


「つかさってさぁ、男の免疫ねぇだろ」


「はっ……? そ、そんなこと」


「俺が気づいてないとでも思ったのかよ」


「……っ」


不覚だ。よりによって、こんな悪魔に弱点を気づかれるなんて。

< 28 / 409 >

この作品をシェア

pagetop