【完】素直じゃないね。
「昨日のキスで意識してんの?」
「違うっ」
「じゃあ今、俺の目見ろよ」
「……っ」
逸らしたまま動けないでいると、高嶺があたしの頬を片手で挟んだ。
「俺こっち」
否応無しに、高嶺の方に顔を向けられる。
──目が、合ってしまった。
どアップで視界に広がる、端正すぎる顔。
ガラス玉のような透き通った瞳が、あたしの瞳を貫いていて。
瞬間、顔中が発火したかのように熱くなり、反対に手先は急速に熱を失った。
そんなあたしを見て、高嶺が容赦無く口を開いた。
「つかさってさぁ、男の免疫ねぇだろ」
「はっ……? そ、そんなこと」
「俺が気づいてないとでも思ったのかよ」
「……っ」
不覚だ。よりによって、こんな悪魔に弱点を気づかれるなんて。