【完】素直じゃないね。
「ごめんね、ありがとう」
『悠月って、好きな子いないの?』
『いねぇし、そういうの興味ない』
『えー、もったいないなぁ』
『はぁ? なにそれ』
『悠月もいつか分かるよ。
好きな人ができるのが、幸せなことだってこと。
世界がその人の色に染まって見えるの。
だから私、朝陽と付き合ってる今が一番幸せなんだぁ』
ふにゃって笑う美織。
目がアーモンド型に弧を描く。
これが、〝美織の〟笑顔。
いつだって美織はそうやって笑ってた。
幼なじみの兄貴と俺を、その笑顔に巻き込んで。