【完】素直じゃないね。


『高嶺が不器用で意地悪だけど本当は優しいってこと、知ってる』


『あたしは、本当の高嶺がいいの。
だから、あたしにくらい本当の高嶺でいてよ……!』


『あたし、引かないから!
高嶺があたしの前で本心を見せるまで。
どんなに仮面かぶったって、高嶺の本心見つけてやるんだから……!』


『決まってること言わせないで。
高嶺が消えたら嫌なんて、そんなの当たり前に決まってんでしょ、ばか』


そうやって、真正面から俺のことを肯定してくれた。

俺のことを見てくれた。


……ずっと、俺の人格なんて消えてもいいと思ってた。


高嶺朝陽でいることが、いつしか存在意義になってた。


朝陽でいれば、俺は生きていていいんだと、そう思えたから。


でも心のどこかでは、認めてほしかった。

朝陽じゃなくて、悠月を。

俺が存在していてもいいってことを。


髪に隠れるようにして開けたピアスの穴も、多分その表れだった。


美織のためだと言いながら、本当は俺自身が許されたかったのかもしれない。

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