【完】素直じゃないね。
すると、ううんと美織が首を振り、俺の手を取って握りしめた。
「違うよ、違う」
そして、涙をこらえながら声を張り上げる。
「生きていてくれて、ありがとうっ……」
「え……」
まっすぐに胸に飛び込んできた声に、俺は目を見開いた。声が詰まる。
だって、想像もしなかった言葉だった。
なんで──。
「事故は、もうどうしようもできない現実。
でもね、あなたがいてくれなかったら、私は朝陽の後を追いかけてた。
私が今ここにいるのはあなたのおかげなの。
心が壊れかけた時、あなたが隣にいてくれたから」
「美織……」
「もう自分を責めないで。自分を許してあげて。
朝陽ね、よく言ってたんだよ。
あなたのこと、自慢の弟だって」
「兄貴が……?」
「何歳になっても、可愛くてしょうがないって。
だから、お兄ちゃんである俺が、なにがあっても守ってやるんだって。
だからね、朝陽は、大切なあなたを守れたことを誇りに思ってるはずよ」
「……っ」