【完】素直じゃないね。
美織が俺の手を握る手に、ぎゅっと力を込める。
俺より三つも年上なくせに、小さな手。
だけど、どんな心をも絆すくらい温かくて。
「朝陽の分まで生きよう。
前を向いて歩きださなきゃ。
ふたりして立ち止まったままでいたら、朝陽に怒られちゃう」
「美織……」
「ひとりになるのが怖かったけど、私はもう大丈夫。
卒業しないと。あなたからも、弱い自分からも、朝陽からも」
俺たちは兄貴に依存していたのかもしれない。
優しくて完璧な兄貴に。
きっとふたりで、突然なくなった途方もないくらい大きな隙間を必死に埋めようとしていたんだ。
俺たちは弱かった。
弱いから、ふたりでいないと存在できなかった。
兄貴という過去にしがみつきながら、遠回りばかりの人生を歩んできてしまった。