【完】素直じゃないね。
……なんか。高嶺が、変わった。
朝陽さんの仮面が外れたみたいな、ずっと強張っていた肩の力が抜けたみたいな、そんな印象を受ける。
相変わらず対応はいいし、どんな頼まれごとをしても受けるんだけど、すごく自然体に近づいた感じ。
無理してる感じが、しなくなった。
……昨日なにかあったのかな、美織さんと。
斜め前の席。
ついつい高嶺の様子を伺ってしまう。
高嶺から、消えてしまう、そんな危うさがなくなったことに心が安堵する。
幸せの方へ向かっているなら、よかった──。
そして放課後。
乃亜が部活に行ってしまい、あたしはクラスの女子三人と教室で話に花を咲かせていた。
話題はもっぱら、校内新聞のこと。
「まさか、つかさが桜庭先輩とあんなことになってるとはね〜」
「ちょっと、やめてよ」
つんつんと脇腹をつついてくる指を押し退けながら、抗議の声をあげる。
だけどそんなものの効力は、人の色恋沙汰に好奇心しかない三人の前では、まったくもって皆無だ。
それどころか、火に油状態。