【完】素直じゃないね。
あのときは、だれかが廊下を通りかかった隙に高嶺を突き飛ばして逃げられたからよかったものの、逃げだせなかったらどうなっていたことか。
考えるだけでも恐ろしい。
背筋に走る悪寒に、身震いしながら教室に入る。
すると、真っ先に目に飛び込んできた、乃亜の席で話している乃亜とだれか。
男だ、しかも金髪の。
ワックスで毛先を遊んでいるようなチャラい男が、あたしの天使に絡んでる……!
「乃亜〜」
ここからだと、こちらに背を向けている乃亜の表情は見えないけど、男のにやけた顔はバッチリ見える。
……なにあいつ……。馴れ馴れしいっつの!
普通なら恐怖心が先立つところだけど、乃亜のピンチとなったら、それどころじゃなくて。
もう、乃亜を助けだすことしか頭になかった。