【完】素直じゃないね。
えっ!? 今、この人舌打ちした……!?
どこに高嶺を怒らせる要素あった!?
「ちょっと、今舌打ち……!」
「だったら、簡単に抱きしめられてんじゃねぇよ、ばか」
いつもより低めのトーンで、怒りをぶつけてくる高嶺。
「はぁっ? そんなの、あんたに関係なっ……」
「──関係なくねぇよ、ちっとも」
なん、で……。
高嶺の声はなんでこんなにも、迷いがなくあたしの胸へ響いてくるんだろう。
「勝手なこと言わないで……」
そう言って、視線から逃れるようにバッとうつむく。
だけど。
「お前隙ありすぎ」
そんな声と共に、逃さないとでも言うように顎を掴まれた。
……やめて。
今、顔上げたら……っ。
そんなあたしの思いなんて蹴り飛ばすように、高嶺にくいと顎を軽く持ち上げられ、あたしの顔は呆気なく晒されてしまった。
「……っ」
眼前の高嶺が、目を見開く。
……ああ、最悪だ。
見られてしまった。
真っ赤になった顔を。