【完】素直じゃないね。
充樹先輩に遅れる旨のメッセージを送り、早速顕微鏡の片づけにとりかかる。
まったく、こんな力仕事を乃亜ひとりに任せるなんて、許すまじ。
乃亜の細い腕が折れちゃったら、どうするのよ……!
心の中で化学の教師に不満を漏らしながら、棚に顕微鏡を一台ずつしまって行く。
四十台近くあるから、ただ運んで棚にしまって行くだけとはいえ、なかなか骨の折れる仕事で。
充樹先輩のこと待たせちゃってるし、早く終わらせないと。
多分それは、充樹先輩のことを考えて心が急いだせい。
一番上の棚に顕微鏡をしまおうと、背伸びをした時。
顕微鏡を頭の上まで掲げた体が、顕微鏡の重さに耐えかねてバランスを崩した。
後ろにぐわんと体が傾く。
「あっ」
やばい、倒れる──。
その瞬間、背中がトン、となにかに当たった。