【完】素直じゃないね。
ふわりと舞うように、甘い匂いが鼻をくすぐる。
「え?」
倒れる寸前、あたしの体は後ろからなにかに受け止められていた。
「おまえ危なすぎ」
続いて、耳元でため息まじりに発せられた、艶のある声。
はっとして振り返れば、思っていたよりも近くで、その瞳はあたしのことを見下ろしていた。
「高嶺……っ」
なんで、どうして、心の中から混乱と疑問が溢れそうになって。
慌てて体勢を整え、高嶺の腕から離れる。