【完】素直じゃないね。
「教室戻ったはずじゃ……」
「戻ったよ。でも水内さんがひとりで教室に戻ってきたから、おまえになんかあったんじゃねぇかなって思って」
そこで一度言葉を止め、高嶺があたしが手にする顕微鏡をちらりと見る。
「そしたら案の定」
ああ、また、この声に揺れる。
揺らいでしまう、心が。
ねぇ、高嶺。
どうして、ここに来ちゃったの……?
「でも、もう大丈夫だから」
強がった言葉を乗せた声は、思ったよりも冷たいトーンで響いた。
あまりにも、突き放す意思がみえみえで。
だけど、高嶺は気にする様子もない。
「いいよ、どうせ暇だし手伝う」
「でもっ」
「放っておけるわけねぇだろ。お前のこと」
反論しようとしたあたしにかぶせるように、高嶺があたしをまっすぐに見つめて言った。
「どうして……」
「お前のことしか考えてないから」
「……っ」
言葉の意味なんて、考えたってなんにもならないのに。
どうしても、言葉を詰まらせてしまう。