【完】素直じゃないね。
高嶺がふっと目元の力を抜く。
こんなに柔らかかったのかと思うほど、その表情は朗らかで。
「ま、そう言っても、お前のことだから人の分まで全部自分で抱え込むんだろうけど。
でも、俺には頼れよ。
遠慮なんかしなくたって、お前のことくらい支えてやるから」
あたしは高嶺の視線から逃げるようにうつむき、下唇をぎゅっと噛んだ。
だめだ。早く断ち切らないと。なにもかも。
「……早く片づけて昼休みにしよ。
あたし、約束があるから」
充樹先輩の顔が、脳裏に浮かぶ。
これが、今のあたしの答え。
「あれ、棚にしまえばいいの?」
何事もなかったように机の上の顕微鏡を指差し、いつものトーンで高嶺が訊いてくる。
「そう」
「ん、わかった」
あたしの答えを受け、高嶺が顕微鏡に手をかける。