【完】素直じゃないね。
「手伝ってくれてありがと」
高嶺に向き合い、お礼を口にした。
と、その時、あたしの視線は高嶺の髪にとまった。
「あ、ほこりついてる」
「え?」
ほこりに気づいていない様子の高嶺。
背伸びをして、高嶺の黒髪についたほこりをつまむ。
きっと、上の棚から降ってきたんだろう。
あの高嶺が、ほこりまで被って手伝ってくれたなんて。
素直にほっこりした感情が込み上げてきて、踵を下ろすと、思わずくすりと笑った。
「ふふ、ほこりなんてつけてたんじゃ、高嶺(たかね)の王子の名が泣くね」
と、その時。
「……行くなよ」
目を伏せた高嶺が、ぽつりと呟いたかと思うと、あたしの腕をぐっと掴んだ。
「え?」