【完】素直じゃないね。


「うえっ? まさか先輩ってそっち……!?」


「違う! 違うからね!?
あらぬ誤解が生まれようとしているね!?」


マシンガン並みな速さで、即否定してくる充樹先輩。


なんだ、違うのかー。


「まったく、油断も隙もないなぁ。
俺、今まで付き合った女の子ってひとりしかいないし」


「うそ! 意外」


めっちゃくちゃ経験豊富そうだと思ってた。


「あはー、よく言われる。
でも、ほんとにひとり。中三の時にね」


「へぇ〜」


「すっごく好きだったな。
あっちから告ってきてくれたんだけど、俺純粋だったからね、すっごく彼女に尽くしてた」


昔を懐かしむような口調に聞き取れて、でもその充樹先輩の瞳は切なく揺れていた。


「だけど」


そう呟いて、一呼吸置き。


「二股、かけられてたんだよね。
知らない年上の男とデートしてるとこに出くわしちゃってね、うん、今もその時のことは忘れられない」


「……っ」


衝撃の告白に、思わず言葉を失う。

< 339 / 409 >

この作品をシェア

pagetop