【完】素直じゃないね。
「うえっ? まさか先輩ってそっち……!?」
「違う! 違うからね!?
あらぬ誤解が生まれようとしているね!?」
マシンガン並みな速さで、即否定してくる充樹先輩。
なんだ、違うのかー。
「まったく、油断も隙もないなぁ。
俺、今まで付き合った女の子ってひとりしかいないし」
「うそ! 意外」
めっちゃくちゃ経験豊富そうだと思ってた。
「あはー、よく言われる。
でも、ほんとにひとり。中三の時にね」
「へぇ〜」
「すっごく好きだったな。
あっちから告ってきてくれたんだけど、俺純粋だったからね、すっごく彼女に尽くしてた」
昔を懐かしむような口調に聞き取れて、でもその充樹先輩の瞳は切なく揺れていた。
「だけど」
そう呟いて、一呼吸置き。
「二股、かけられてたんだよね。
知らない年上の男とデートしてるとこに出くわしちゃってね、うん、今もその時のことは忘れられない」
「……っ」
衝撃の告白に、思わず言葉を失う。