【完】素直じゃないね。


あくまでも穏やかで、そして少し軽くしているような語り口。


伏せられた睫毛が、光を受けてキラキラと光っている。

そのせいで、睫毛は涙に濡れているように見えた。


「それからかな、女の子と遊びでしか付き合えなくなったのは。
ありがたいことに告白してくれる子はたくさんいたけど、心の底では信じられなかった。
また裏切られるんじゃないか、嘘をつかれてるんじゃないかって」


「充樹先輩……」


そんなことがあったなんて、全然知らなかった。

いつも平和そうに笑ってる、それが充樹先輩だから。


「つっちゃんもね、正直最初は遊びのつもりだった。
最初は同じ境遇の子に出会えて気になったんだ。
でも、いつでもまっすぐな君にどんどん惹かれていった」


校庭の方から、外で遊んでいる声が聞こえてくる。

時は止まっているように思えて、その実そっとたしかに秒針を進めていた。


静かな音楽室に、そしてあたしの心に、充樹先輩の声がじんわりと波紋を作る。

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