【完】素直じゃないね。
「もっともっと俺に傾いちゃいなよ。
俺が許可するから」
充樹先輩……。
この声に、すべてを託してもいいの……?
この人には、まっすぐに向き合いたい。
自分の心を偽ったりしないで。
「もう少し、時間をください」
口からこぼれたのは、そんな言葉だった。
「断らないってことは、俺に傾きかけてるってこと?」
あたしは小さくこくりと頷いた。
「充樹先輩は、素敵な人だと、思い、ます」
この人を好きになりたいと、そう思った。
瞬間、高嶺の顔が頭をよぎる。
高嶺に期待しちゃいけないことは、自分がよくわかってる。
高嶺には、大切な人がいるのだから。
こんなにも自分の心が見つからないのは初めてだ。
でも充樹先輩なら、あたしの心を正しい方向へ導いてくれるような、そんな気がした。