【完】素直じゃないね。


「もっともっと俺に傾いちゃいなよ。
俺が許可するから」


充樹先輩……。

この声に、すべてを託してもいいの……?


この人には、まっすぐに向き合いたい。

自分の心を偽ったりしないで。


「もう少し、時間をください」


口からこぼれたのは、そんな言葉だった。


「断らないってことは、俺に傾きかけてるってこと?」


あたしは小さくこくりと頷いた。


「充樹先輩は、素敵な人だと、思い、ます」


この人を好きになりたいと、そう思った。


瞬間、高嶺の顔が頭をよぎる。


高嶺に期待しちゃいけないことは、自分がよくわかってる。

高嶺には、大切な人がいるのだから。


こんなにも自分の心が見つからないのは初めてだ。


でも充樹先輩なら、あたしの心を正しい方向へ導いてくれるような、そんな気がした。







< 342 / 409 >

この作品をシェア

pagetop