【完】素直じゃないね。
あの日──高嶺に抱きしめられた日から、あたしは高嶺と話をしていない。
というか、あたしが避けていた。
高嶺にどんなふうに接したらいいかわからない。
自分のせいで不自然な空気が流れていることはわかってる。
でも、友達の距離感が、高嶺に対してだとわからなくなってしまう。
目が合うだけでも、息苦しくて。
今日も一度たりとも高嶺の目を見られないまま、一日が終わってしまった。
そして放課後。
図書委員会に出られなくなった友人の代理で、あたしは図書室にいた。
なんでも、部活が相当忙しいんだとかで、代理を頼まれた。
細長いフレームの眼鏡をかけ、ぴっしり七三分けにした、いかにも委員長というスタイルの三年生が前に出て進行している。
今日の議題は、『今月のおすすめ図書をどの本にするか』らしい。
……うん、あたしの出る幕はないかな。
全然活字読まないもんな。