【完】素直じゃないね。


一番後ろに座り、無関心なあたしを他所に、目の前では熱い論争が繰り広げられている。


みんな自分の推薦図書があるらしく、なかなか譲らないため、話し合いは平行線。


あたしが入る隙は、もちろんない。

というか、あたしの存在は、自分のおすすめの本のプレゼンをする彼らの視界にすら入ってない。


これ代理立てる意味あったのかな〜なんて思いながら、暇つぶしにルーズリーフに落書きでもしようと、足元のスクールバッグを探った。 すると。


あれ? ない……。


スクールバッグの中でいくら手を動かしてみても、筆箱が手に触れる感触がない。


あたしは、そこで初めてスクールバッグに筆箱が入っていないことに気づいた。


うわ、教室に置いてきちゃったんだ。

最悪……。


ついてない時って、つくづくついてないんだよね〜……。


運の無さにがくりと肩を落とした時、ブレザーのポケットの中で、マナーモードにしてあるスマホが揺れた。

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