【完】素直じゃないね。


他の人に見つからないように、机の下でスマホを確認する。


さりげなく文面に目を走らせたあたしは、思わず目を見開く。


『高嶺:ベランダに出ろ』


ディスプレイに表示されていたそれは、高嶺からのメッセージだった。


高嶺……!?

なに、いきなり……!


なんで今ベランダに出なければいけないのか、見当がつかない。


しかも委員会中だっていうのに、そんなこと言われても……。


スマホを持ったまま、どうすればいいか思案していると。


『今すぐ来い』


恐るべきことに、躊躇するあたしの心境を読み取ったかのような脅迫文が続けて送られてくる。


……まったく、なんなのよーっ!


観念したあたしは辺りを伺い、みんながディスカッションに熱中していることを確認すると、こっそり足音を立てないようにベランダに向かう。


みんな、こちらに気づく気配もない。

本への情熱が、まさかこんなふうに都合よく働くなんて思ってもみなかった。

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