【完】素直じゃないね。
「日吉つかさちゃんね」
「日吉とでも呼んで」
「おっけー! 日吉ちゃんって呼ぶ!」
「じゃああたしは、武、」
言いかけたあたしの唇が、すっと伸びてきた人差し指で塞がれた。
「違う違う。
俺のことは、宙って呼んで?」
ニコニコしながらあたしを見る……宙くん。
チャラチャラしてて、でも顔はモデルみたいに整っていて。
そんな宙くんと目を合わせて、数秒。
「……っ!」
あたしは唐突に、自分の男嫌いを思い出した。
そういえば、さっき、宙くんの指、あたしの唇に触れた、よね……。
女子の扱いに慣れてそうな宙くんにとっては、なんでもないスキンシップなんだろうけど、あたしからしたら……。
途端に震えだす手。
乃亜を助けることしか頭になかったからか、忘れてた。
目の前にいるのが、男子だってこと。