【完】素直じゃないね。


『なんか喋れよ』


いつもより低めの声で高嶺がそう言った。


「なんかって……」


『おまえの声が聞きたい』


「え……?」


そういうこと急に言うの、やめてくれないかな。

こっちは不意打ちくらってるんだよ、ばか。


普通なら、からかってるんだろうで済む話なのに、高嶺の声があまりにもまっすぐ胸に届いてくるものだから、言葉の真意がわからなくなる。


「……エビフライって美味しいよね」


『なんだよそれ』


「だ、だってあんたがなんか喋れなんて言うから!」


『会話の引き出し少ねー』


そう言って高嶺がふきだしたのが、電話越しにわかった。


あ、高嶺が笑ってる。

なんか久しぶりに聞いたかも、高嶺の笑い声なんて。


電話越しに聞こえる高嶺の声は、こもって聞こえるせいか、耳元で話しかけられているような感覚に陥り、くすぐったい。

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