【完】素直じゃないね。
すると、低く押し込めた声が、スマホを介して耳に届いてきた。
『……わかった』
静かな了承の言葉を、あたしは黙って聞く。
そんなあたしを見つめたまま、高嶺は『でも』と再び口を開いた。
『お前が俺のことどう思ってるか知らねぇけど、俺がお前に言った言葉は全部本心だから』
「え?」
ドクン、と胸の奥が疼く。
まるで心臓の奥深くが、ぐっと掴まれたように。
『なんも言わなくていいから、それだけは覚えといて』
「高、嶺……」
その時。
「あっ、ちょっとそこ!
サボってるんじゃないわよ!
今から決選投票するんだから、入ってきなさい!」
図書室の窓が勢いよく開き、図書委員の怒号が飛んで来た。
げ! ついにバレた……!
「やばっ! ごめん、あたし中入るから!」
『ん』
振り返りざま、高嶺と目が合う。
まっすぐこちらを見上げるその瞳から視線をそらせなくて、数秒、時間が止まったかのように視線を交じらせ合い。
あたしは振り切るように踵を返して図書室に入った。