【完】素直じゃないね。
決選投票を終え、図書室を出たのは、五時。
決選投票といいつつ、白熱の議論はあの後も続き、とても長引いてしまった。
結果、おすすめ図書に選ばれたのは、見るからにお堅い難しそうな本。
これおすすめされても読む人いるのかと、首を傾げたくなる。
とりあえず、図書委員の友達には、おすすめ図書に選ばれた本のことだけ伝えよう。
そんなことを考えながら、下駄箱に向かう。
この時間になると、校舎をうろうろしている生徒もいない。
自分の足音だけが、薄暗い廊下中に響く。
昼間より長く感じる階段を降り、一階の踊り場に出る。
ふと。
『俺がお前に言った言葉は全部本心だから』
どこからか、さっきの高嶺の声が聞こえてきた気がした、その時。
「あ、つっちゃん!」
突然、高嶺の声を遮るように、現実の声が耳に届いた。