【完】素直じゃないね。
引っ張られるように振り返れば、充樹先輩がにこにこ手を振り、階段を駆け下りてくる。
……って!
「充樹先輩、めっちゃカラフル……!」
充樹先輩の顔や、麻布のエプロンのあちらこちらに、カラフルな絵の具が付着していた。
まるで絵の具の雨に降られたみたいに。
「絶賛製作中だからね」
えへんと胸を張るように充樹先輩が言う。
「そういえば、充樹先輩、美術部だったか」
「そ! でも図版が大きくて足腰疲れるよ〜」
おじいちゃんみたいに腰をトントン叩く充樹先輩。
たしかにこれだけ絵の具だらけになるのだから、大掛かりな作業に違いない。
「うわー、大変そう。
お疲れさまです」
「そんな俺に、エール送ってよ。
頑張って、充樹先輩♡って」
「ふふー、やだ」
充樹先輩と同じくらいのへにゃーって笑顔を浮かべて、スパッと断る。
「な! 即答……!」