【完】素直じゃないね。
あたりはすでに暗くなっていた。
この辺は、人通りも少なく街灯もほとんど立ってないから、とても静かだ。
頬に打ちつけてくる風が冷たく、痛い。
つかさが自宅の庭に入っていくのを、遠目で確認する。
見つからないように、数十メートル離れたところから。
こうして、この道を歩くのは、今日で三日目。
用事は済んだ。
俺も帰ろうと、寒さに首をすくめながら踵を返したその時。
「日吉ちゃん、無事に帰れたみたいだね」
そんな声が聞こえてきて、足元のコンクリートに向けていた顔をあげれば、
「宙」
目の前に立っていた制服姿の宙が、にこっと笑った。
それはまったくもって予期しなかった登場で、俺は思わず固まる。