【完】素直じゃないね。
やがて土手沿いに差し掛かる。
川の近くは、一段と寒さが増す。
マフラー巻いてくればよかったかも。
昨日洗濯しちゃったんだよな〜なんてそんなことを考えていた、その時。
ビュウッと大きな音をたてて、一際強い風が吹きつけた。
思わず乱れた髪を抑えようとした、瞬間。
右手から、手提げ袋の持ち手が離れた。
あっと思った時にはもう、手提げ袋は土手を転がり落ちていて。
「待って……!」
手提げ袋が待ってくれるはずなんてないのに、そう口走り、土手を駆け下りて手提げ袋を追いかける。
だけど、軽いからか、手提げ袋が転がり落ちるスピードの方が早かった。
あたしの数メートル先で、坂の下、すぐそこに待ち構えていた川に、手提げ袋は吸い込まれるように虚しい音をたてて落ちた。
「うそ……」
流れていく手提げ袋を見つめたまま、呆然と立ち尽くす。
せっかく作ったのに……。
充樹先輩に渡そうとしたのに……。