【完】素直じゃないね。
──この声の主を、あたしはよく知ってる。
はっとして振り返れば、肩で大きく息をする高嶺が川辺に立っていて。
「高嶺……」
高嶺がこちらに駆け寄ってくる。
そして走ってきた勢いそのままに腕を掴み、あたしを川辺に引き戻した。
足が土を踏むと、あたしは混乱した頭で高嶺を見上げる。
「なんで高嶺がここに……」
「兄貴の墓参りに行ってたんだよ。
で、川にだれかいると思ったら……。
この寒い時に、なにしてんだよ!」
高嶺の顔からは、はっきりと焦りの色が見てとれた。