【完】素直じゃないね。


「充樹先輩にあげようと思って作ったクッキー、川に落としちゃって……」


「え?」


肩越しに振り返り手提げ袋の方にやったあたしの視線の先に、高嶺が視線を重ねる。


手提げ袋は未だ石に引っかかり、そこに留まっている。


見えてるのに届かない。 届くことができない。

それがとても、もどかしい。


「──わかった」


不意に、あたしの腕を掴んだままでいた高嶺が呟く。


「俺が取ってくるから、つかさはそこで待ってろ」


「えっ!? 高嶺……!!」


あたしの制止を振り切り、ザバザバと音をたてて、川に入っていく高嶺。

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