【完】素直じゃないね。


「全然大丈夫だよ。
っていうか、足濡れてない!?
なにがあったの? 大丈夫!?」


「あ、これはちょっといろいろあって……」


まさか川に入ったとは言えず、思わず答えを濁す。


すると、充樹先輩が目を細めて笑った。


「それなのに走ってきてくれたんだね。
ゆっくりでも、俺待ってたのに」


そう。充樹先輩は、いつだって、ゆっくり答えを待ってくれていた。


急かさずに、ひたすら待ってくれた。


──だから。


だからあたしは甘えてしまったんだ。


あたしはバッと勢いよく頭を下げた。


「ごめんなさいっ。
やっぱり、やっぱり充樹先輩の気持ちには答えられない……っ」


答えを出した声が、震えていた。

< 379 / 409 >

この作品をシェア

pagetop