【完】素直じゃないね。
「全然大丈夫だよ。
っていうか、足濡れてない!?
なにがあったの? 大丈夫!?」
「あ、これはちょっといろいろあって……」
まさか川に入ったとは言えず、思わず答えを濁す。
すると、充樹先輩が目を細めて笑った。
「それなのに走ってきてくれたんだね。
ゆっくりでも、俺待ってたのに」
そう。充樹先輩は、いつだって、ゆっくり答えを待ってくれていた。
急かさずに、ひたすら待ってくれた。
──だから。
だからあたしは甘えてしまったんだ。
あたしはバッと勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさいっ。
やっぱり、やっぱり充樹先輩の気持ちには答えられない……っ」
答えを出した声が、震えていた。