【完】素直じゃないね。
「……うん」
必死に涙を拭っていると、ぽつりと、充樹先輩の声が落ちてくる。
「わかってたよ。
つっちゃんが、高嶺くんを見てるってこと」
「充樹先輩……」
視線をあげれば、充樹先輩がとても穏やかな笑みを浮かべていた。
「俺のこと好きになろうとしてくれてたことも、わかってる。
でも、ダメだったんだよね」
胸が痛い。
こんなにも苦しいのは、充樹先輩の優しさが身にしみるから。
あたしたちがお互いに持っているのは、対等な気持ちではないかもしれない。
でも、充樹先輩が大切な存在であることには変わりなくて。