【完】素直じゃないね。
「ごめんなさい。
正直でいるってそう思ってたのに、あたしずっと自分から逃げるために、充樹先輩のことたくさん振り回した……っ」
充樹先輩の優しさにつけこんだ。
自分がこれ以上、傷つくのが怖くて。
最低だ。あたし。
どんなに嫌われたって、文句の一つも言えない。
すると「ううん」と、充樹先輩が首を横に降る。
「俺の方こそ、つっちゃんのそういう気持ちわかってて、強引に君の気持ちを閉じ込めようとしたんだ。
ずるかったんだよ」
「そんなことない……。
だって、充樹先輩といる時、あたし苦しくなかった。
充樹先輩がいたから笑っていられた。
何度も、何度も助けられた……」
次から次へ溢れてくる本音を吐露すれば、充樹先輩がそっと微笑んだ。
それは、むりやり繕った笑顔なんかじゃない。
穏やかで、心からの笑顔。
こんな笑顔、もしかしたら久しぶりに見たかもしれない。
「ありがと、つっちゃん。
そう言ってくれて。
つっちゃんを好きになれてよかった。
俺、つっちゃんのおかげで一歩踏み出せたんだ」