【完】素直じゃないね。
そしてそっと睫毛を伏せ、こぼすように囁く。
「好き、だったよ、つっちゃん」
「……っ」
これがお別れ。
充樹先輩の言葉の端から、そんなニュアンスが聞いて取れた。
もう空き教室でふたりでお弁当を食べることもない。
でもね、充樹先輩。
あたし、楽しかったんですよ。
「充樹先輩っ」
喘ぐように名前を呼ぶ。
「ん?」
「充樹先輩に渡したいものがあるんです」
「え? なになに?」
手提げ袋の中から、ラッピングしたクッキーを取り出す。
「充樹先輩の大好物のクッキー。
初めて、お菓子作りました。
毒味はしてません」
それでもよかったら、と重々しくクッキーを差し出すと、「ふはっ」と充樹先輩が吹きだした。
「これは覚悟して食べなきゃだね」
あたしもつられて、思わず笑みをこぼす。
「はいっ……」
涙で濡れたあたしの顔に、充樹先輩が笑顔を咲かせてくれた。