【完】素直じゃないね。


うつむき、ぐすっと鼻をすすっていると。


「高嶺悠月。高二」


前を向いたまま呟かれた声が、耳に届いた。


「目標は兄貴だけど、だいぶ、というか相当不器用です。
高二にもなって、初恋してます」


「え?」


高嶺が、こちらを振り返った。

その顔には、穏やかな笑みが浮かんでいて。


「俺と付き合って。つかさ」


その言葉を受け止めた途端に、感情と涙が一緒になって込み上げてくる。


感じた。

今、たしかに、心と心が重なる音が。


こんなにも、心が満たされる瞬間があるなんて、知らなかった。


あたしは壊れたみたいに、何度も何度も頷く。


「うんっ……。
好き。だれより大好きだよ、高嶺……っ」


涙で顔をぐしゃぐしゃにして自分の想いを告げれば。


「物好き」


高嶺が小さく笑い声を漏らし、その瞬間、高嶺の腕があたしを捕らえて。


そのまま、胸元へと引き寄せられた。

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