【完】素直じゃないね。
そして、ゆっくりと体が離れた。
微笑みあたしの涙を拭う高嶺が、視界いっぱいに映る。
「なぁ、つかさ」
「ん……?」
「ひとつ、してほしいことがあるんだけど」
「なに?」
「名前呼んで」
「え? 名前?」
「俺の名前、呼んで?」
あたしは微笑んで頷いた。
高嶺の気持ち全部、伝わってきたから。
何度だって呼ぶよ。
その名前を。
大好きな君の、大切な名前を。
「悠月」
「……うん」
「悠月」
「うん」
「好きだよ、悠月」
高嶺が、悠月が笑った。
見たことないくらい、まぶしい笑顔で。
高嶺(たかね)のプリンスでもなくて、朝陽さんでもなくて。
世界にひとりの素顔の君を、これからもずっと、見つめてるから。