【完】素直じゃないね。


「俺、ドリンクバー行ってくる」


乃亜を誘惑するだけしておいて、高嶺はグラスを持つと席を立った。


そして、まだ頬を赤らめている乃亜も、

「あっ、私もお手洗いっ!」

よほど恥ずかしいのか、この場から逃げるように行ってしまった。


そこに残された、あたしと宙くん。


う、うそでしょーっ!

男とふたりきりとか……!


「日吉ちゃん」


助けを求めるように駆けていく乃亜の背中を見つめていると、不意に名前を呼ばれ、あたしはびくっと肩を揺らした。


ちらりと視線を上げ宙くんを見ると、あのクリクリした瞳と目が合った。


……大丈夫大丈夫。

乃亜の男装だと思えばいいんだ。


似てるのは目だけだけど……。

なんて、思わない思わない!


宙くんは乃亜、宙くんは乃亜……。


そう言い聞かせると、少しだけ強張っていた肩の力が抜けていくのが分かった。


さすが、あたしの天使パワーは絶大だ。

< 45 / 409 >

この作品をシェア

pagetop