【完】素直じゃないね。
「どうしたの?」
できるだけ落ち着き払ったトーンで尋ねると、宙くんがほんの少し眉間に力を込めた。
「日吉ちゃんはさ、高嶺のこと、知ってる……?」
言い淀んだ、躊躇いがちで曖昧な言い方。
でも、宙くんの言わんとしていることは分かった。
「高嶺が本性を隠してること?」
「やっぱり、知ってるんだ……!」
宙くんが目を丸くして、声を大きくした。
すると自分の声の大きさに驚いたのか、バッと口を抑えて辺りを見回す。
そして、ひそひそ話でもするように、口の横に手を当てる宙くん。
「知ってるの俺だけだったから、ちょっとびっくりした」
あたしも、宙くんが高嶺の本性を知っていたことに、少しびっくりしてる。
たしかに、さっきも親友って言ってたし、ふたりが話してる時の雰囲気から、仲が良いということは伝わってきてはいたけど。