【完】素直じゃないね。


「高嶺がつかさちゃんに、あんなふうに素顔で絡んでるの意外でさ。
高嶺って、表面上は優しいこと言うけど、女子とは一線引くやつだから」


なんとなく、宙くんの言ってることは分かる。

宙くんはこう言ってくれてるけど、あたしもついこの間、お前には関係ないと突き放されたばかりだ。


高嶺はだれにも優しいけど、奥までは踏み入れさせない。


肘をついた宙くんが、コーラの入ったグラスを左右に揺らしながら、そっと微笑んだ。


「あんなだけど本当は優しいんだ、高嶺は。
だから日吉ちゃん、高嶺のこと見ててやってくれないかな」


「え……?」


宙くんの真意を汲み取れず、思わずぽかんと宙くんを見つめる。


すると。

「お待たせ」

そんな声と共にテーブルにグラスを置く音がして、ハッと我に返る。


「あっ、おかえり、高嶺」


今までのやりとりなんてなかったのように、宙くんが高嶺に笑顔を向けた。


それから乃亜も戻ってきて、また他愛ない話が再開した。


ただ、あたしの心の中では、なぜか宙くんの言葉がしばらくの間溶けずにいた。







< 47 / 409 >

この作品をシェア

pagetop