【完】素直じゃないね。
「ちょっ、ねぇ、待ってよ高嶺!
送ってもらわなくって、大丈夫だって……!」
「なんでだよ。
そんな怯えなくたって、夜道で見境なく襲ったりしねぇから、心配すんな」
「ち、違う!」
たしかに、痴漢とか不審者よりも、よっぽど高嶺の方が危ないけど……!
「だって、高嶺の家も反対側って言ってたじゃんっ」
さっきファミレスで、住んでる場所の話題がちらりと挙がった。
その時、あたしと同じ方向に家がある人はいなかったのに。
すると、高嶺が立ち止まり、こちらを振り返りざま盛大なため息をついた。
「ほんっと、かわいくねぇやつ」
「はっ?」
言い返した瞬間、突然おでこにピリッとした痛みが走った。
「痛っ」
それがデコピンだと気づくのに、時間はそうかからなかった。