【完】素直じゃないね。
「……ねぇ、高嶺」
「ん?」
「今朝、助けてくれてありがとう」
まだ言えてなかった、お礼。
宙くんとの間に入って、庇ってくれたあの時のこと。
「あぁ、別に」
あたしの手を引きながら、高嶺がぽつりと続ける。
「つかさの弱点知ってるのは、俺だけでいいから」
「……っ」
なにか言い返そうと思ったのに言葉に詰まり、その背中を見つめる。
なんなの、高嶺。
女の子慣れしてる高嶺の言うこと、真に受けちゃダメって分かってるのに、なんでこんなに動揺しちゃうんだろう。