【完】素直じゃないね。
と、その時。
「あの、西高の高嶺くんですか!?」
不意に掛けられたピンク色の声に、高嶺が立ち止まった。
高嶺と同じく声がした方を見れば、乃亜には敵わないけど、すごく可愛い女子高生ふたりが立っていた。
制服が違うから、他校の生徒だろう。
高嶺がさっと切り替えたプリンスモードで答える。
「ああ、そうだよ?」
「うわぁぁぁ!本物の高嶺のプリンスだ!」
ふたりの興奮と熱に染まった瞳は、高嶺に一心に向けられている。
あたしは慌てて、高嶺の手を振り払った。
手首なんて掴まれてたら、変な誤解を招かざるを得ない。
でも、女子高生達は手首のことなんて気づいていないようだった。
というか、あたしの存在も。
彼女達は顔を見合わせながら、目を輝かせてこちらに寄ってくる。