【完】素直じゃないね。
そして、高嶺に会えたことが余程嬉しいのか、頬を上気させて高嶺の腕を掴んだ。
「まさか会えるなんて……!」
「噂どおり、かっこいいですねっ!」
「俺も、こんな街中で、君達みたいな子に声掛けられて嬉しいよ」
「キャ〜ッ!」
……うわ、天性のタラシだ。
まったくどうしたらそんなにポンポン、誘惑の言葉が出てくるんだか。
「あの、もし良かったら、このあと一緒にカラオケ行きませんか!?」
「高嶺くんの歌声聞きたいっ♡」
ずっと黙って聞いていたあたしは、そこでピクッと肩を揺らした。
女子高生達のカラオケプランには、当然あたしが入ってるはずがない。
あたしがいる場所なんてない。
むしろ、邪魔なだけだ。
女子高生達は、高嶺の腕を掴んで離そうとしない。
……帰ろう。
高嶺もあんな可愛い女子高生達に囲まれちゃって、あたしの存在なんてすっかり忘れてるだろうし。
ぎゅっとスクールバックの持ち手を握り直すと、あたしは高嶺になにも言わずその場を離れた。