【完】素直じゃないね。


……とか言っておいて。


「どうしよ……」


あたしは帰路である細い路地をひとりで歩きながら、襲いくる心細さに耐えられなくなっていた。


あっという間に日が暮れて、辺りは暗い。


その上、大通りから外れた細い路地は、街灯もほとんどなくて。


こう見えて、おばけや心霊の類は大の苦手だ。


ぎゅうっとスクールバックを抱きしめ、そろー、そろーっと歩みを進める。


どこでもドアが切実に欲しい……。

この際、タケコプターでも全然いいから……。


目の前に現れるはずもない、かの有名なひみつ道具のことを考えていた、その時。


「ねぇねぇ、そこの彼女~」


突然背後から、声が届いた。


静寂を壊すようにして聞こえてきた声。


嫌な予感にドキリと心臓が反応して、反射的に立ち止まる。

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