【完】素直じゃないね。
「君、ひとり?」
「暇な俺らの相手してくんない?」
このどこか人をバカにしたような猫撫で声が向けられているのは、あたししかいない。
だって、まわりには他に人がいないのだから。
恐る恐る後ろを振り返ったあたしは、「げ……」ともらしそうになったのを、慌てて堪える。
そこに立っていたのは、地元でも有名な不良高校の男子3人。
学ランを着崩して、頭髪はカラフルで、俗に言うヤンキーというものを、これでもかと体現している。
……最悪だ。こんな人達に絡まれるなんて。
ただでさえ男が嫌いだというのに、その中でもこういうタイプは最も苦手とする部類だ。
乃亜がいるときじゃなくて良かった、そう安堵できたのはほんの一瞬で、今はもう身の危険を感じて破れそうなほどに心臓が鳴っている。
背中をツーッと悪寒が走り、手が微かに震えだす。
人どころか車の通りもないこの路地では、どんなに声を上げても、大通りまで届くはずがなかった。