【完】素直じゃないね。
ジリジリと詰め寄られ、あたしは一歩後ろに下がった。
頭の中で、危険を知らせる警報音が鳴り響いている。
でも、近づいてくる声に、逃げようにも足がすくんで動けない。
どうしよう、どうしよう……。
だれか助けて──。
うつむき、ぎゅっと目をつぶった、その時だった。
声が、したのは。
「お前ら、なにしてんだよ」
突然背後から首元に腕が回ったかと思うと、ぐっと引き寄せられて。
後ろから強引に包まれる、あたしの体。
悪寒が支配していた背中に、人の温もりが重なった。